おもち会 Vol.7 ライブレポート

文・酒井優考
写真・櫻井文也 / 新藤早代

2020年1月12日(日)、おもちプロダクションによる7回目のイベント「おもち会vol.7~鏡開き2020~」が東京・渋谷セブンスフロアで開催された。この日の出演者はラブワンダーランド、柴田聡子、横沢俊一郎&レーザービームス。いずれも強烈な独特の雰囲気を放つこの3アーティストの音を求めて、100人入ればギュウギュウのセブンスフロアに満員以上の音楽ファンたちが詰め寄せた。受付を見ていると、主催が様々なライブハウスで配布していた「おもちバッチ」を提示する人も多く、出演アーティストのファンだけでなく、イベント自体のファンも一定数いるようだ。お客さんは若者やカップルから、もしかしたら出演者の親御さんと思われるような方まで、老若男女がドリンクを手にしたり、中目黒LOUNGE店長がかけるジャジーなDJに耳を傾けたり。

そうこうしていると1番手のラブワンダーランドが登場。京都からやって来た6人組の彼らは、本日休演のフロントマンとしても知られる岩出拓十郎が率いるラヴァーズロック・バンドだ(ラヴァーズロックというのは70年代の英国で発祥したレゲエのサブジャンルのこと)。

ラブワンダーランド

1曲目はギタリストの足立大輔が作曲したテンテンコの楽曲「アロエ・ベラ」を、ラブワン流にセルフカヴァー。一音一音をゆったりと溜めてパフォーマンスしながら、この京都のバンドを初めて観る人も多いであろう客席に、甘くとろけるような世界観を提示する。

続く「ラズベリーサン」も同様に、ヴォーカル・ぱるの幼さと芯の強さが同居する歌声で、甘いフルーツがたくさん登場する歌を歌いつつ、文字通り甘美&メロウな音像で聴く者をトリップさせてくれる。曲が終わり、岩出が「ラブワンダーランドというバンドです。僕らはレゲエバンドです」と一言だけ挨拶をすると、ハネるような白川大晃の軽妙なキーボードが印象的な「恋のモーニングコール」へ。

ラブワンダーランド

また岩出がポツリと一言「次の曲は亡くなった人に捧げます」と告げると、次の曲は「永い昼」。岩出のメインボーカルとぱるのコーラスが合わさり、その隙間を縫うように岩出と足立が空間系エフェクターを巧みに踏み変えてギターを弾く。歌声の邪魔をせず、けれど同時に主張もする白川のキーボード、矢野裕之のあえてエッジを出さないベース、リムショットの音が映える小池茅のドラム。6者が合わさって美しいアンサンブルを聴かせる。天国ってこんな感じなのかな…。

小池のドラム・パッドから様々な水音・雨音が鳴る「雨と友達」に続いては、なんとandymoriの「オレンジトレイン」をラブワン流ラヴァーズロックに変えてカヴァー。雨の歌から太陽の歌への美しい流れだが、太陽は太陽でも南国に落ちる夕陽をイメージさせるようなアレンジで、andymoriの名曲を自分たちのものにしていく。

MCでは、この日だけの試みとして「永い昼」「雨と友達」「オレンジトレイン」の3曲においてPA卓で強烈な残響のエフェクトをかけていたダブマスター、シバ(ヴァージョンブラザーズ)を紹介する。

ホーンセクションの音や三連符が効果的に響く、陽気なのにどこか切ない「空をまたぐ橋」、ベルの音やあどけなさの残るぱるの声に誰しもが幼少期にを想起させる「ハローアゲイン」と続いて全8曲を披露し、ラブワンダーランドは大きな拍手の中、舞台を後にするのであった。

終演後にメンバーに話を聞くと、「大好きな柴田聡子と共演できることで緊張した」と語りつつも、柴田と打ち解けて写真を撮ったりもしていた。

続いては、突如として金髪ショートにしてきた柴田聡子。まずはその見た目の変化から驚かされる人も、「かわいい…」と声を漏らす人も。

柴田聡子

1曲目は不穏なコード進行からパッと晴れ間が差すような新曲。続く2曲目はしっとりとした「後悔」。一人ギターの弾き語りで、歌詞の一語一語を大切に、観客に投げかけるように歌っていく。笑顔で一言「センキュー」。

曲間には深く深呼吸をしてみたり、ニコニコと伸びをしたりしながら、新曲と人気曲を交互に披露。柴田は歌もアコギもある時はパーカッシブに、ある時には感情たっぷり伸びやかにパフォーマンスし、しかし確実に聴く者の胸キュンポイントを突いてくる。そして思い浮かぶのは、大切な人とのどこまでも美しい情景たち。歌い上げては「センキュー」と一言、そしてこぶしを上げて「イエ~イ」と一言。チャーミングな人である。

5曲目は不思議な柴田ワールド全開な新曲。言ってしまえば、変なとこに島があって、森の影に枇杷が成っていて、袖の中にひよこがいる(!)だけの歌詞なのに、なぜこんなにも胸をつかまれるのだろう。小曲ながら、個人的にはこの曲がなぜかこの日一番心に残る曲になった。

柴田聡子

不思議な友人関係をやはり情感たっぷりに歌った「いきすぎた友達」から、ほぼワンコードでどんどんどんどん盛り上がっていく「ワンコロメーター」と続いたところで、両者に「犬がいなくなった」歌詞が共通していることに気付いてニヤリ。これは意識されたものだったのだろうか?ワンコードの「ワンコロメーター」がだんだんと歌から叫びのように変わっていき、曲が盛り上がるに連れてオーディエンスからも歓声が上がる。

歌い終え、熱気あふれる観客席に「おもち会にお呼びいただきありがとうございます。おもち食べた?」と聞いて笑いを誘うと、先ほどまでの興奮をクールダウンさせるかのように「涙」をしっとりと語りかけるように歌い上げる柴田。全8曲を聴きながら、思わず「毎日の見飽きた何気ない景色こそが美しいんだ。美しく生きよう」などと考えてしまっていた。

終演後は「すごく楽しかったです」と語った柴田。転換中は同じく楽しそうに「かわいかった~」「勢いがすごかった」と感想を語り合う観客であふれかえっていた。

横沢俊一郎&レーザービームス

最後の出演者は横沢俊一郎&レーザービームス。泣きのコード進行に、どこか牧歌的で切なさの漂う歌の「遠い人」からスタートし、本日から導入したというボーカルのエフェクターのトラブルもありつつも、文字通り「遠い人」へ馳せた想いを歌い上げる。アットホームな雰囲気の中に郷愁感をまとった「誰にもわからない」、キラキラと落ちていくようなキーボードのリフが印象的な「いつかなにか」と続き、どこか不器用そうに、しかしいずれも丁寧に歌い上げていく。MCでは「柴田聡子さんもラブワンダーランドも良かったですよね。こんなライブに出られるなんて、ありがとうございます」と感謝の言葉を述べつつ、生活感あふれるナンバー「こんな感じのストーリー」へ。〈ひとりフリッパーズギター〉なんて形容されるのも納得の楽曲に、観客も自然と身体を揺らしていると、横沢も感極まったのか突然大声を上げる場面も。暦では1月になってしまったが冬にピッタリの「ディッセンバーガール」、ピアノと横沢の歌から始まる「許されないことばかり」と続き、やはりどこかぶっきらぼうなんだけど、それでも誰よりも愛を信じている男性像を描いてみせる。

横沢俊一郎&レーザービームス

「さっき奇声を上げて喉をつぶしたけど回復してきた」とMCで観客を笑わせると、吠えるギターが主人公の心の叫びにも重なる「なんてこった」、そして終わった恋愛を悔いるような「これで最後だね」へ。曲が終わると横沢は、やっぱりぶっきらぼうに「みなさんお疲れ様です。次で最後の曲になります」とだけ言い、ラストナンバー「your dog」へ。横沢の歌い上げる男性像はどこか頼りなく、いつも切なくて感傷的。でも、「そんな自分こそが最強なんだ」というような強さや幸福感も併せ持っていて、だからこそ聴く者の胸に沁み入るんだなと実感する。まるで一冊の本を読み終えたようにしっとりとパフォーマンスを終えると、「退場!」と言いレーザービームスのメンバーと共に舞台を後にする。

横沢俊一郎&レーザービームス

しかし鳴りやまない拍手に包まれ、すぐに再登場する横沢俊一郎&レーザービームス。「アンコールをやります。ちょっとザワついてくれると嬉しいです」とはにかみながら、ギターの轟音がセブンスフロアを包みこむ「春へ」。初期衝動感も残しつつ、まさに今日という楽しかった1日にも「さようなら」するような曲だ。横沢がまたしてもぶっきらぼうに「メンタルヘラっていきましょう。健全すぎる、良くない。頭おかしいやつが丁寧に生活するのがいいと思うので、毎日を大事に」と言うと、本当のラストナンバー「カラコンベイビー」へ。先の言葉通り、毎日を丁寧に生きるがごとく歌唱する横沢に、思わず観客は釘付けだ。長いアウトロにいつまでも「ラララ」と歌い上げると横沢は「ありがとうございました。気を付けて帰ってください!」と言い、この日一番の大きな拍手に包まれる。

終演後の横沢に本日の感想を聞くと、みんなにメッセージを伝えるために朝から朗読をしていたらしく、そのおかげもあってか「今日はすごく良かった」とのこと。横沢が伝えたかったメッセージ、きっと多くの人に伝わったことだろう。

横沢俊一郎&レーザービームス

セットリスト

ラブワンダーランド

01 アロエ・ベラ

02 ラズベリーサン

03 恋のモーニングコール

04 永い昼

05 雨と友達

06 オレンジトレイン

07 空をまたぐ橋

08 ハローアゲイン

柴田聡子

非公開

横沢俊一郎&レーザービームス

01 遠い人

02 誰にもわからない

03 いつかなにかに

04 こんな感じのストーリー

05 ディッセンバーガール

06 許されないことばかり

07 なんてこった

08 これで最後だね

09 your dog

en1 春へ

en2 カラコンベイビー

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